2.国土交通省観光庁請願・意見交換会
※請願書・質問書の全文は別途参照。
(1)概要
【日時】
2023年6月23日(金)14:30~16:00頃 ※良い時間を30分延長。
【場所】
衆議院第2議員会館第3会議室
【主催】
カジノ問題相談会 (6月23日(土)からは、『夢洲カジノを止める大阪府民の会』として再スタート)
(2)請願項目・質問項目と観光庁による文書回答
【請願項目】
※「請願書・質問書」の全文 『資料』参照
- 大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画の「認定」を直ちに取り消すこと。
- 大阪府・市(IR推進局)に対して、「認定」における7つの条件の速やかな実施を指導すること。
- 実施協定の締結における国土交通大臣の認可をしないこと。カジノ営業の免許を付与しないこと。
【質問項目と文書回答】
<質問>1.別紙に記載された7項目の条件について
特定複合観光施設区域整備法第九条(区域整備計画の認定)第13項には「国土交通大臣は、特定複合観光施設区域の適正な整備を確保するため必要があると認めるときは、第十一項の認定に条件を付し、及びこれを変更することができる」と定められている。
今回の認定は7つの条件が付された。すなわち現在の「区域整備計画」は「適正な整備を確保するための必要がある」と認め、条件が満たされぬままでは認定されないと解される。7項目の条件は、「区域整備計画」の認定において必要条件とされるか否か。見解を求める。
<回答>
今回の認定に付された7つの条件は認定の必要条件ではなく、認定は既になされている。
一般的に、許認可に際して条件という用語で付記されるものについて、おっしゃるような「必要条件」ではない性質のものが少なからず存在していると認識しています。
<質問> 2.「条件(7項目)」の1、7について
項目1では、「審査委員会の意見が適切に反映されたものとなるよう今後の詳細設計・建設において十分留意すること」としている。また項目7では、「認定審査における特定複合観光施設区域整備計画審査委員会の意見を十分に踏まえ、必要な充実を図りつつ区域整備計画の着実な実施及び適時必要な見直しを行うこと」としている。
(1)国土交通大臣は、審査委員会の意見が反映されるよう改善した新たな「区域整備計画」の「詳細設計・建設」の提出、「必要な見直し」を求めているのか。提出を求めている場合、期限をどう定めているのか。
(2)また「適切に反映された」ものであるか否かの審査は、いつ、誰によって行われるのか。
<回答>
2.について
ご指摘の『新たな「区域整備計画」の「詳細設計・建設」の提出』の意味が明らかではなく、あくまで条件のとおり、カジノ施設やIR全体の建築物のデザインについて「今後の詳細設計・建設において十分留意すること」や「区域整備計画の着実な実施及び適時必要な見直しを行うこと」を求めているものである。
今後の詳細設計・建設で審査委員会の意見が適切に反映されたかどうかの確認は、国土交通省又は審査委員会により、提出状況等を踏まえ適時行われるものと考えている。
<質問>3.「条件(7項目)」の2について
国土交通大臣は「効果の推計」に関して「推計に用いる各種データ等の精緻化に取り組む」ことを求めている。
(1)「推計に用いる各種データ等の精緻化に取り組む」との指摘は、認定された「区域整備計画」の推計の根拠となるデータが粗笨であったことを認めるものと解する。見解を求める。
(2)「効果の推計」にある「効果」とは、「審査委員会」による「報告書」にある「経済的社会的効果(17.観光への効果/18.地域経済への効果/19.2030年の政府の観光戦略の目標達成への貢献)」という理解でよいか。
(3)「審査委員会」による「報告書」には、以下、記載されている(引用、略)。
(4)上記、「区域整備計画」認定の根拠となった「審査委員会」の「報告書」における「経済的社会的効果」の項目では、夢洲IR・カジノ事業計画の根幹をなす事業収入、年間売り上げ5,200億円(うちカジノ収入4,200億円)の根拠となる来訪者数の推計根拠が明確でなく、「実際には下振れする懸念」があるとまで述べている。
需要サイドの分析でも、「推計値の妥当性に関し十分な評価を行う材料に欠ける」とし、さらに来訪者数の推計では、「細部の設定数値の中には公証力ある根拠提示に欠けるものも見られる」「カジノ来訪者数の推計の前提となる「性向」の設定値の妥当性については、その根拠が明確でなく、十分な評価は困難」「他の来訪者部分の予測の計算過程についても…(略)…算出数値の水準について一般的に納得されるには至らない」としている。
科学的な利益推計の根拠が明らかでない「区域整備計画」のまま、実施協定の締結・認可、カジノ免許の付与を行うことは出来ない。見解を求める。
<質問> 4.「条件(7項目)」の3について
「特定の国籍等客層に偏ることなく、幅広い来訪者が訪れるような集客の実現に取り組むこと」とあるが、現在の計画では毎年欠くことなく「年間2千万人の来訪者(USJは1450万人)」があり、「5200億の年間収入(内カジノ収入4200億円・利用客の70%は日本在住者を対象)」を維持し続けることが前提とされている。
この数字は年間約1,400万人(1日約3万8千人)の日本在住者が継続して来場する試算となる。
(1)日本の総人口1億2447人の1割以上が来場することなどありえないと考える。また現在の国内来場者に依存する計画で、年間4,200億円のカジノ収入売り上げは可能と考えているか。見解を求める。
(2)単独で世界最大のカジノといわれるシンガポールのマリーナベイ・サンズでも、IR施設を含め年間来訪者数は4500万人、売り上げは3000億円である。夢洲カジノ計画では、この1/2に満たない来場者数で1.7倍もの売り上げを想定しているが、その根拠は示されていない。根拠の説明を求める。
(3)海外からの来場者は現在600万人が見込まれている。「審査委員会」は「報告書」でこの割合を増やすよう求めている。しかし訪日外国人旅行者数は、コロナ禍以前で最も多かった2019年で3188万人であった。この数字で試算しても、訪日外国人旅行客の5人に1人以上が大阪夢洲IR・カジノを訪れることになる。その根拠はない。「報告書」では「外国人来訪客の増加に向けたプロモーションと集客」を求めているが実現可能性をどう考えるか。見解を求める。
<回答>3.及び4.について
ご指摘の年間1400万人や約600万人という数値は、延べ来訪者数であり、1人が複数回来訪した場合には複数カウントされるものと承知している。ご指摘のマリーナベイサンズの来訪者数については、カウント人数(センサーで計測する通行人の数)であり、来訪者数とは多少異なる数値であると認識される。また、収入への寄与度については、訪問者ごとの消費額水準(所得層区分)や滞在期間の違いにより有意に異なるものであり、来訪者数の単純な頭数比率と必ずしも一致するものではないと考える。
大事な点としては、計画する内容の実現可能性を十分高めていく取組がしっかりなされることが重要であると考えている。その他、ご提示のご貴見とは必ずしも認識が一致しない点が複数ある。なお、審査委員会の審査結果報告書では、推計に関しては、現段階で得られる情報の範囲(得られるデータ等の面で現実的な制約もあるなか)で推計している方法には一定の理解を示せる、といったコメントも示されている。
3.(2)について、基本的には御理解のとおりである。
<質問> 5.「条件(7項目)」の4について
「地盤沈下については、継続的に沈下量計測などのモニタリングを実施するとともに、想定以上の沈下が進行した場合などの対応について十分検討しておくこと。液状化対策については、今後の対策工法等の詳細及び対策範囲の確定に当たって不十分なものとならないよう検討すること。土壌汚染については、仮に今後新たな事象が判明した場合に備えて対応策を幅広に検討しておくこと」としている。また「審査委員会」による「報告書」には、以下、記載されている(引用、略)。
(1)「報告書」では、夢洲が「洪積層における長期的な地盤沈下が見込まれる土地である」ことを認めている。その上で今後の地盤沈下予測について、「沈下の実測データ等が限られる中で、沈下量予測の閾値に余裕があるかは不明瞭で、厚みに欠ける予測でもある」との意見を採用し、「想定外」の事態が起きた場合への対応の十分な検討を求め、「リスク管理意識の高さ」について「高評価はし難い」とした。さらに「具体的な工法やその実施範囲の詳細は未確定」としている。
①これはIRの認定に関する「要求基準」の適合かつ、実現可能性の根拠に関わる内容である。見解を求める。
②「具体的な工法やその実施範囲の詳細は未確定」としつつ、「区域整備計画」を認定した根拠は何か。2019年に行なわれた大阪市によるボーリング調査結果によれば、重量構造物の建築のためには支持基盤である洪積層(第2天満層/砂礫層)まで約80メートルの支持杭を打設する必要が認められる。しかし現在の地盤改良は、地表から6メートルまでの覆土による汚染度対策と、その下約20~30メートルの埋立層(浚渫土砂・建設残土)の液状化対策に限られている。地下80メートルの埋立地という特殊性を持った施工事例は存在するのか。軟弱地盤工法さえ決まらぬまま、認定を行うことは誤りである。見解を求める。
(2)夢洲では、PCBやダイオキシンなど土壌汚染が確認され、さらに液状化などの問題が存在する。大阪市は土壌対策費として788億円もの公費投入を決めたが、地盤沈下対策は含まれていない。大阪市は、「通常の想定を著しく上回る大規模な地盤沈下や陥没が生じた場合を除いて、大阪市が費用負担を行わない」としているが、「報告書」に記載されているように地盤沈下対策には、「想定外」の事態が予見される。「報告書」は、「工期等の遅れが生じた場合の対応」など、「後発事由で発生の所要費用の分担」について問題視している。工法が決まっていないまま工期ありきの突貫工事を進めることは、大阪府市に莫大な財政負担を強いることにつながり、果ては安定したIR・カジノ事業の展開を不可能とする。見解を求める。
(3)夢洲への主要アクセス道路について、「多重性に乏しい」としている。南海トラフ大地震の可能性が指摘されているが、仮に1日5万人の来場者を想定した場合、避難は十分であると考えるか。また軟弱地盤の上に設置された道路、鉄道、橋梁、トンネルの安全性と輸送能力は必要かつ十分な条件を満たしていると考えるか。見解を求める。
<回答>5.について
(1)(2)について、地盤沈下対策として、排土バランス工法、第二天満層を支持層とした基礎杭による対策が想定されているほか、液状化対策としてセメント系固化工法を基本とした検討がなされており、対策の方針は示されている。また、基礎杭の施工事例として、夢洲近傍において、大阪府咲洲庁舎:65mの事例があるものと承知している。
(3)について、IR来訪者の避難は、基本的に、島外避難ではなくIR区域内の広場等への一次避難が計画されている。加えて、夢洲外への避難ルート(夢舞大橋・夢咲トンネル)は、耐震対策がとられているものと承知している。
<質問> 6.「条件(7項目)」の5について
「地域との十分な双方向の対話の場を設け、地域との良好な関係構築に継続的に努めること」としている。また「審査委員会」による「報告書」には、以下、記載されている(引用、略)。
(1)IR整備法は、「区域整備計画案」を策定するうえで「住民の意見を反映させるために必要な措置を採る」と規定し、説明会や公聴会などの実施を義務づけ、審査においても「地域における十分な合意形成」を評価基準の一つとしている。しかし大阪府、大阪市はこれを怠った。11回を予定した説明会はコロナ感染症拡大を理由に7回で打ち切られた。予定されていた説明会会場の最大収容数は、大阪府民のわずか0.0125%。府民が求めたインターネット配信による視聴も拒絶された。また公聴会では約9割を超える公述人が多角的な視点から夢洲へのカジノ誘致に反対との公述を行ったが、すべて「区域整備計画案」には反映されなかった。
2022年2月、大阪市会において議員による「住民投票」が提案されたが、委員会付託もされず十分な審議がなされないまま本会議で否決された。そして同年、大阪府で45年の時を経てカジノの是非を問う住民投票条例制定直接請求署名運動が取り組まれ、法定数を大きく上回る210,134筆の署名が集められた。しかし大阪府議会はわずか半日の審議でこれを否決した。大阪府市は、主権者である大阪府市民への説明責任を尽くさず、「手続きは踏んだ」と住民意見を封殺した。IR整備法の精神を踏みにじる瑕疵である。見解を求める。
(2)「条件5」や「報告書」にある「双方向の対話の場」を大阪府民は求めている。国土交通大臣として、再度、住民による合意形成を促進するため、「双方向の対話の場」を持つことを条件とした認定を告示した職責を果たし、大阪府に指導することを求める。見解を求める。
<回答>6.について
IR整備法では、都道府県等は、区域整備計画を作成等する際には、公聴会の開催や議会の議決など、所要の手続きを行うことが定められており、こうした手続きが適正に行われたかどうかについても審査を行っている。地域との良好な関係の構築は大事な点であると考えている。条件として付記した点については、大阪府市による取組状況をまず注視する等フォローアップしていく。
<質問> 7.「条件(7項目)」の6について
(1)ギャンブル依存症について、「依存防止対策を始めとして実効性を持って取り組むこと。また、ギャンブル等依存が疑われる者の割合の調査を行い、その結果を踏まえ実効性のある依存防止対策を定期的に検証し、大阪府・大阪市及び設置運営事業者が連携・協力して必要な措置を適切に講ずること」とある。また「報告書」でも「25.依存症対策等(p.25~26)」として多くの課題が指摘されている。
(2)しかし大阪市会の参考人質疑で、IR事業者であるMGMリゾーツのエドワード氏は「ギャンブル依存症を抱えているかも知れない約2%に実際に問題が起きないようにサポートする」と答弁した。カジノ来場者の約2%が依存症になることを想定しても、その数は20万人を超えると想定される。大阪府では「ギャンブル等依存症対策基本条例」が制定されたが、最大の依存症対策はカジノ誘致を撤回することである。見解を求める。
<回答>7.について
大阪の依存症対策としては、大阪依存症センターの設置やMGMの実際の経験を踏まえた様々な対策などが計画されている。例えば、大阪依存症センターについては、5月末に「大阪依存症センター機能検討会議」が設置され、同センターが担う「ワンストップ支援」及び「普及啓発」の具体化の検討が始まっている。
この点に限らず、依存防止対策については、十分な対策が確実に実施されるようにしていくことが大変重要であると考えている。
<質問> 8.「報告書」の「国際競争力の高い魅力ある滞在型観光の実現」
「報告書」について、以下報告されている(引用、略)。この「報告書」から、夢洲IR・カジノは、「要求基準」の要件を満たさず、国際競争力の高い魅力あるIRとは言えないと考える。見解を求める。
<回答>8.について
ご貴見のようには考えていません。
<質問> 9.夢洲IR・カジノ用地賃貸契約問題について
(1)現在、夢洲IR・カジノ建設予定地の評価額が問題となっている。大阪市大阪港湾局が不動産鑑定業者4社に建設予定地の評価を求めたところ、3社が1㎡あたり12万円で一致。IR辞儀容者への賃料評価額は、同じ3社が1㎡あたり月額428円で一致した。「奇跡一致」とまで言われ、談合疑惑が持ち上がっている。さらにこの評価額は、近隣の埋立地に比して異様に低く抑えられ、大阪市が「IR事業を考慮外」とするよう鑑定業者に指示していたことも判明している。
不当に安く評価した額をもとに用地賃貸契約をIR事業者と契約することになれば、大阪市は大きな損失を被ることになる。この賃料は物価スライドのみの固定。賃料は、正当に評価された場合と比べると1年で15億円、35年間で500億円超の値引きになるとの試算もある。現在、夢洲市有地をIR事業者に賃貸することを違法として賃貸契約締結の差し止めを求める裁判が続けられている。
(2)「区域整備計画」の審査、認定の過程で、用地の評価額についての談合疑惑について審議されたか。審議された場合、どのような内容であったか。審議内容を明らかにしていただくことを求める。
(3)IR・カジノ用地賃貸契約が差し止められた場合、認定の取り消しは行なわれるか。見解を求める。
<回答>9.について
月額賃料については、区域整備計画への必須記載事項として求めているものではない。また、観光庁としては、現時点で、ご指摘のような不正等があったと認定されているものではないと認識している。
認定の取消に関しては、仮定の話に予断をもってお答えは困難。