IR折り込み広告「大阪の成長へ向けての始動―OSAKA IR」への批判

大阪IR(事業者は「MGM大阪株式会社」)の宣伝を行政が行うことは看過できない!

今年(2026年)2月以降、大阪メトロの駅等に大阪IRの宣伝ポスターが貼られ、デジタル広告も掲示されています。また、「大阪の成長に向けて始動 統合型リゾートOSAKA IR」の標題で新聞に折り込みチラシが入れられました。また、これより以前から「大阪IR」の特設サイトが開設されています。

折り込みチラシ 表

※このチラシ内のIRイメージ画像は事業者「MGM大阪株式会社」からの提供のため「転載禁止」となっていますので加工しています

折り込みチラシ 



IR折り込み広告「大阪の成長へ向けての始動―OSAKA IR」への批判
1.IRカジノは大阪経済の成長や暮らしの充実につながっているか?
大阪IRは、カジノ会社が運営する収益・入場者ともに8割をカジノに依存する計画の民間施設であるのに、それを大阪府と大阪市が税金を使って宣伝することはあってはならない。チラシでは、大阪IRを「世界最高水準の成長型IR」と宣伝するとともに、「6 カジノ施設 適切な国の監視及び管理の下で公正・廉潔なカジノ事業を運営」として、カジノは、IRのほんの一部で、カジノの負の影響は最小化できると嘘の宣伝をしている。
カジノの収益見込額(大阪府・市合計)毎年約1060億円の内訳は、入場料約320億円、納付金約740億円であり、入場料は日本人だけが一人6000円で、そのうち大阪府・市に3000円が納入されることから、日本人のカジノ入場者の計画数は年間のべ約1070万人とわかる。日本人のカジノ入場者が年間のべ約1070万人と計画されていることを公表すべきであるが、なぜ公表しないのか。
大阪府・市への納付金年間約740億である。カジノの粗利益の15%が大阪府・市への納付金と定められていることから、カジノの粗利益は年間約4900億円と分かる。大阪府・市のIR推進局は、カジノの収益約4200億円との差約700億円が販売促進費(=カジノのための餌代)と認めているが、この巨額の販売促進費について、何らかの規制が必要である。
またカジノ事業者に対し、国庫納付金(カジノ行為粗利益GGRの15%)、認定都道府県等納付金(GGRの15%)の納付が義務付けられており(IR整備法192条、193条)、この納付金が公益性の財源と考えられている。
 しかしこのGGRの30%というのは、妥当な水準なのだろうか?諸外国のカジノの納付金のGGRに占める負担率を概観し日本と比較してみる。米国ネバダ州/20.4%、シンガポール/30.1%、マカオ/40.3%、オーストラリアビクトリア州/57.2% となっている(IR推進会議取りまとめ 2017)。米国ネバダ州のみが20.4%と日本より負担率が低くなっているが、他の国・地域の負担率は日本より高く、オーストラリアビクトリア州では60%近い。「公益」を謳うなら「私益」をはるかに上回る負担率であるはずである。GGRの70%を「私益」とするものは「公益性」を僭称することはできないはずである。
2.ギャンブル依存症対策
射幸性の程度の抑制はできているのか?
IR整備法第二条(定義)7項において「カジノ行為」は「カジノ事業者と顧客との間又は顧客相互間で、同一の施設において、その場所に設置された機器又は用具を用いて、偶然の事情により金銭の得喪を争う行為」と定義されている。偶然の利益を追い求める射幸心の拡張を防ぎ、ひいては依存症防止のための規制は重要であるが、そのタテマエと実態は乖離している。
① カジノ施設の規模
IR整備法41条1項7号では、「専らカジノ行為の用に供される床面積の合計がIR観光施設の床面積の合計の3%を超えない」とされた。当初は上限の具体的数値(15,000㎡)が上がっていたが、いつの間にか削除された。このためIR観光施設全体の床面積を大きくすればカジノ施設の床面積も大きくすることが出来る。ちなみにシンガポールでは、ゲーミングエリアの上限を15,000㎡に規制している。
② 広告の規制
IR整備法106条1項においては、虚偽又は誇大広告に対する規制が定められている。またIR区域外の地域での広告物による広告も禁止されている(同条2項)。しかしテレビ、インターネットにおける広告については現時点では規制が無い。またIR区域内であれば看板、貼紙、ビラ配布等によるカジノの広告を行うことが出来る(山崎 2021:14)。大阪府市は家族連れでのIR入場を奨励しているので、IRに入場した子ども達が、カジノの広告を目にすることになる。
③入場等制限
*20歳未満の者、暴力団関係者、入場料を納付しない者は、カジノ施設に入場することが出来ない(IR整備法69条)。しかし暴力団員、あるいは暴力団員でなくなった日から起算して5年以内の者を実際にどのようにして認識し排除するのか。
*入場料による制限
日本人等の入場者に対しては、安易な入場の抑止を図りつつ「過剰な負担とならない」金額として、6,000円/回(24時間単位)を課することにしている(IR整備法176条、177条)。しかし6,000円といえば、2~3日アルバイトをすれば稼げる金額である。安易な入場抑制に機能するとは考えられない。ちなみにシンガポールでは入場課徴金は150シンガポールドル(3/13現在の為替レートで約18,668円である。
*入場回数制限
日本人等の入場回数を連続する7日間で3回、連続する28日間で10日間に制限することにしている(IR整備法69条4号、5号および173条)。しかし1回の入場は24時間単位であり、例えば日曜日の午後2時に入場すれば、月曜日の午後2時まで滞在可能である。法の文言は7日で3回であるが実質は7日のうち6日は滞在可能であり、1週間のほとんどをカジノで過ごすことが出来る。同様のことは28日で10日間についても言えることになり、28日のうち20日間が滞在可能となる。これではギャンブル依存症状態と言っても過言ではない。
*マイナンバーカードによる本人確認
日本人等に対してカジノへの入退場時にマイナンバーカードを利用した本人確認を行うこととしている(IR整備法70条)。後述するが、カジノ事業者は、国内に住居を有しない外国人、またはカジノ管理委員会で定める金額以上の金銭を当該カジノ事業者の管理する口座に預け入れることが出来る者に対して資金を貸し付けることが出来る。マイナンバーカードは金融機関に紐づけられているので、本人が承認すればカジノ事業者は本人の金融資産を確認でき、その範囲内委で資金の貸し付け枠を設定することもできる。本人確認のために使用されるマイナンバーカードがギャンブル依存症への隠された誘因となる。
予防啓発と「大阪依存症センター」の実情
*大阪府立高校におけるギャンブル等依存症予防啓発授業は、文科相の学習指導要領に基づき、保健体育の授業の中で「精神疾患」という大項目の中の中項目「依存症」そのまた小項目として「ギャンブル依存」が表面的に扱われているのに過ぎない。
*大阪府市は依存症対策の「トップランナー」を目指すと宣言し、「相談・医療・回復のワンストップ支援を享受できる機能を整備」(第2期大阪府ギャンブル等依存症対策推進計画)した「大阪依存症対策センター(仮称)」を目玉商品としてきた。しかしここにきて計画の遅れが目立っている。人員規模も決まっておらず、場所も床面積も未定。開設の時期も「IR開業までに」と大雑把である。
それよりも、「府によると、現時点ではセンターに治療や入院機能は持たせない見込みで、既存の医療機関との連携が鍵になる」(朝日新聞記事)ということである。充実したワンストップ機能を持つセンターができるから、カジノを開設しても大丈夫!」と宣伝していたのではなかったのか?
ギャンブル依存症治療の現状について「医療現場では、ギャンブル障害の診療を担う医療機関は限られており、必要な人に医療が提供できていない」(松下 2018) と述べられている。そのような中、「大阪依存症センター」は実現可能なのか?

3.治安・地域風俗環境対策
特定金融業務
カジノ事業者は、特定金融業務として、特定資金移動業務、特定資金受け入れ業務、特定資金貸付業務、両替業務を行う。
*特定資金移動業務とは、銀行等の金融機関を介し、カジノ事業者が管理する当該顧客の口座と当該顧客が指定する預貯金口座との間で当該顧客の金銭の移動に係る為替取引を行う業務として定義される(IR整備法第2条第8項)。具体的に言えば、現金を持ち運ぶ手間やリスクの軽減のため、顧客の預貯金口座から事前に賭け金をカジノ事業者が管理する顧客の口座に送金、ギャンブルでの勝金はこの口座から顧客の預貯金口座に送金される。特定金融業務には、銀行法が適用されないので口座を調査することが出来ず、マネー・ロンダリングに悪用される恐れがある。
*特定資金受け入れ業務
いかなる名義を以てするかを問わず、顧客から手数料を受領し、また顧客に利息を支払ってはならない(IR 整備法 84条1項)。
*特定資金貸付業務
カジノ事業者は、①国内に住居を有しない外国人、②カジノ管理委員会規則で定める金額以上の金銭を当該カジノ事業者が管理する口座に預け入れているものに限定して資金を貸し付けることが出来る(IR整備法85条1項)。従って日本人等であっても一定金額以上を事業者が管理する口座に預託していれば、カジノ資金の貸し付けを受けることが出来る。なおカジノ事業者は特定資金貸付契約を締結する時は、顧客の返済能力に関する事項を調査し、その結果に基いて貸付金額の限度額を顧客ごとに定めねばならない(IR
整備法86条1項)。このやり方では、過剰貸し付け、ギャンブル依存症の助長が懸念される。改正貸金業法(2006)で導入された「総量規制」(年収の3分の1を超える貸付は禁止)は、カジノ事業者には適用されないので過剰貸し付への歯止めが無い。
*両替業務
外国からの顧客に対して、外貨と日本円の両替を行うが、外貨が犯罪によって得られたものである場合、マネー・ロンダリングに悪用される恐れがある。
問題ギャンブラーとカジノ関連犯罪の社会的費用
カジノ関連犯罪等の社会的コストについてはKindt(1994)は、米国イリノイ州に関して「合法化された大規模なギャンブル活動の増加は、州の刑事司法制度のコストに、40~50%の増加をもたらす可能性がある」と述べた。またPolitzer, MorrowとLeavey(1981)の分析では、問題ギャンブラーが社会に課す年間コスト(治療費、未返済債務、生産性の損失、等に加え法執行、司法、収監コストが含まれる)は61,000ドル(現在の為替レートで9,516,000円)で、それほど深刻でない問題ギャンブラーの場合は26,000ドル(4,056,000円)であるとした。
Thompspn & Quinn(2000)は、米国サウスカロライナ州の問題ギャンブラーを対象とした研究において、問題ギャンブラー一人当たりの年間社会的コストは6,300ドルであり、これに全米の問題ギャンブラーの推定人数を掛け合わせると、年間190億ドルの社会的コストとなり、この数値は政府が全米のギャンブル産業から徴収する年税額を上回る数値となる、と指摘している。
問題ギャンブラーは後半期になると、ギャンブルでの負けとそれに伴う家庭や職場でのストレスによる圧倒的な苦悩に直面する。そして判断力に影響が出るほどに動揺する。問題ギャンブラーが犯罪に手を染めるかどうかは、個人の価値観、信念、正当化、機会、逮捕される可能性、利用可能な選択肢の喪失、あるいは自尊心や身体等を傷つけられる脅し等、の要因に左右されるとしている(Lesiuer 2002)。

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